
作日、ジャズ評論家の中山康樹さんが亡くなったとの追悼記事を新聞で見て、胸が痛んだ。
中山さんとは、2002年に四谷の「いーぐる」で一度お会いしたことがあった。「マイルスを聴け!Version5」を刊行された直後であった。
まさか62歳という若さで亡くなるとは思いもよらなかった。まだまだこれから活躍されるだろうと期待していたのに、残念でならない。
中山さんの音楽に対する造詣は私など足元にも及ばないが、同じMILES DAVISを愛する者として、書かれた著書を愛読させていただいていた。
中山さんの著書では、それまでの常識や先入観にとらわれることなく率直にご意見を述べていて、「そうだ、そうだ。」と共感しながら、マイルス本だけに限らず、ビートルズやジャズ入門書まで読ませていただいた。
書かれた内容のなかでも特に感銘を覚えているのは、マイルス・デイヴィスの「BIRTH OF THE COOL」の解説の、次の件(くだり)である。
「(クールの誕生は)ジャズ関係の入門書・名盤選をみると必ずといっていいほど入っている。 (中略) しかし選ぶ人たちは、本当にこれがいいと思っているのだろうか。ちゃんと感動したりしているのだろうか。(中略)
ぼくには、みんなが認めている、ということは感動を覚えている(本当?)はずの本作や「クールの誕生」に準じる当時のマイルスの音楽がピンとこない。マイルスの音楽は、時代を問わず、他の誰よりも感情に訴え、語りかけてくる。しかし、だが、にもかかわらず、どうしたわけか本作からは、なにも伝わってこない。グッド・ヴァイブレーションが感じられない。(以下、略)」
この批評文からもわかるとおり、軽妙な表現を用いてはいるが、こんなに正直にご自分の持論を展開されるのはさぞ勇気が要ったことだと思う。
改めて、このジャズ批評のジャイアンツに哀悼の気持ちを表したいと思います。